3つのナイトメアー
悪い。華代も、魔性の女そのものといった可南子を毛嫌いしていたはずなのに
と、その時は、その心境の変化を不思議に思った。
そうして、母は翻訳の仕事をしながら、華代はE県にある自宅を行き来しな
がら、父の看病に専念するという生活が数か月続いた。その甲斐あってか、父
は劇的な回復をみせた。奇跡がおこったかのような、ガン患者とは思えない良
好な状態が二週間続いた。しかし、その後急速に容体が悪化して、意識不明の
まま集中治療室に移され、一か月間死の淵をさまよった後、そのまま還らぬ人
となった。
倒れて病院に運ばれてからわずか半年後、ようやく桜のつぼみがふくらみ始
めた花冷えの早春の日、父は四八歳という若さで旅立っていった。
父の葬儀は、形式上本妻である可南子が喪主となって、彼女のマンションか
ら出された。久しぶりに見た可南子は、中年にさしかかる年齢になっていた
が、その魅力はほとんど衰