3つのナイトメアー
も頭を下げた。豊かな生活を保障してくれて慈愛に満ちた、こんな素晴らしい
夫に恵まれた自分と比べて、最低の夫に酷い仕打ちを受けた挙句、お金まで持
ち逃げされた華代は、本当に悲惨だと思った。
その時の恭子は、これがきっかけとなって、自分の順風満帆だった運命の歯
車が狂いだすことを、予想もしてなかった。
「山本先生、資料ここに置きますね」
華代が、夫の冬彦に柔らかな笑顔で呼びかける。華代が夫の事務所に勤め始
めてから、ひと月が経つ。最初の頃、華代は慣れない東京での一人暮らしも重
なってか、戸惑いも多かったようだが、この短期間のうちに、本来の才気さを
発揮して卒なく事務処理をこなす、夫の有能なサポーターとなった。更に、恭
子の身内でありながら、ろくに休暇もとらず骨惜しみなく働く姿が、まわりに
好感をもたれた。