3つのナイトメアー
あの頃の華代は、自分の薄幸な境遇にも屈せず絶えず明るかったが、心の奥
底では恭子へのどす黒い感情が渦巻いていたのかもしれない。恭子がそのこと
に早く気がついていれば、二人は皮肉な運命の終焉を迎えることはなかったろ
う。
ともあれ、華代が夫の事務所にとけこみ、東京での生活の基盤を順調に築い
ていくのに、恭子は、華代に対してようやく父のことでの借りを返した気持ち
になり、胸を撫で下ろした。
表面上、そんな平穏な日々が半年間続き、季節が夏を迎えたある日、華代が
硬く曇った表情で、恭子達夫婦に言った。
「実は昨夜、E県の母から、父が脳梗塞の発作で倒れたって電話があったの。
以前から兆候があったから用心してたんだけど。今病院で検査中なんだけど、
手術することになりそうだって。あきら兄さんは仕事が忙しいから頼めない
し、母一人だと心細いって泣きつかれて」