3つのナイトメアー
ない生活を与えてくれる冬彦に価値を見い出し、感謝しようと懸命になった
が、限界だった。圭を知ってしまった今となっては、夫の地位や二人で築いて
きた豊かで安定した暮らしなど、砂の上の籠城に過ぎなかった。恭子は本気で
冬彦と別れることを考えた。
冬彦は辣腕の公認会計士だが、家庭の財政管理は、ほぼ妻である自分に任せ
っきりにしている。それが、恭子への信頼と深い愛情からだと、その時は気が
つかなかったが。これまで貯めてきた預金や持ち株、亡くなった父が残してく
れた高級ゴルフクラブの会員証などの、自由になる総額をざっと頭の中で計算
してみた。それは、四十の女が、これから先、生きていく上で十分な額だった
ことに、安堵の溜息をついた。若い圭に金銭的負担をかけるのだけは避けたか
った。子供が幼ければさすがの自分も躊躇したと思うが、娘はとうに手を離れ
て、遠く離れた土地で青春を謳歌している。華代や冬彦に対して、自分は決し
て顔向けでき