シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
『玲…なんかヒントにあることはあったか? あたし…聞き流しているから、お前の判断が頼りなんだからな』
「即座に断定に至るのは至難な業だ。負の感情が強すぎて、1つ1つ検証していくには、膨大な時間がかかりすぎるから…ひとまず由香ちゃんに伝えるよ。紫茉ちゃん、残り時間は?」
『あと、5分少々』
僕は、この状況と…僕の感じたことを…由香ちゃんに向けて意識を飛ばす。
短い時間気づき得たことは、まず5つ。
きっと櫂なら、その他の声の材料から、その理由を論破出来るはずだ。
1つ。
"エディター"には、昔の櫂と芹霞の記憶がないこと。昔の記憶は、専ら一縷に対する憎悪のみ。
2つ。
"エディター"に、生前の"イチル様"の記憶がある。しかしその裏付けは、主観ではなく客観の記憶のみ。その記憶内容は、黄幡会内部に食い込んだものを含める。
3つ。
"エディター"は、殺された記憶を持つ。しかしその殺人現場の記憶はなく、葬式で幽霊だと言われた直後に、自覚したものと思われる。
4つ。
"エディター"は、誰かに唆(そそのか)されているフシがあること。そして"王子様"を見つけたら、楽園に招かれる"選ばれた"者になれると信じている。
5つ。
"エディター"は、一縷関係者に虐められていた形跡があるが、昔は一縷を虐めていたのは確かだ。
櫂。
いくつかお前の前提が崩れている。
その中で、お前はどう結論を出す?
遙か上を見上げて、櫂を思い返していると、足下がぐらりとふらついた。
悪酔いしたような感覚。
僕の身体が、この世界に拒否反応を示しているのだろう。
早く逃げ出したいと、防御本能が大きく警鐘を発している。
『玲…大丈夫か? もう出るか?』
「この瘴気にあてられただけだ、大丈夫。ぎりぎりまで居たい」
此処には、渦巻いているんだ。
――"狂気"が。
それは嫉妬のような、憎悪を端緒とするもので。
声は時系列を狂わせ、乱れるにいいだけ乱れているけれど、それでも僕は1つの言葉が頭から離れなかった。
"ココロヲカエセ"
その"心"の中にいる僕。
心がないと訴えているのなら、此処は一体…誰の何の中なのか。
"ココロヲカエセ"
誰に対して?