シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
此処の世界には、"エディター"の怨念じみた声が反響している。
次第に声は、ヘドロの様な悪臭を放ついばらの蔓へと姿をかえ、触手のようにくねくねと蠢いて僕を誘いはじめる。
それはまるで、僕を手招く…母の手首のように。
一瞬…僕の悪夢だと思ってしまった。
そして、蔓は…その動きだけではなく、外貌を僕の母に変えていく。
多くの母が僕に笑いながら、ゆらゆらと身体を揺らめかせながら、ゆっくりと僕を手招きし始めたんだ。
――禍々しく。
「……!!!?」
僕の心が、途端に動揺して忙しく…乱れだす。
どくん、どくん。
僕の心臓が、怖れに悲鳴を上げて鳴り響く。
――カワイイレイ…。
ここは!!!
――サア……
"エディター"の世界で!!!
――オカアサマノトコロニオイデ?
『玲!!! "エディター"の防衛本能が、お前の"不安"に擬態しているだけだ!!! 此の領域ではまだ、お前の世界と繋がっていない!!! 偽りだ!!』
――レイハ…オカアサマモノ。
『玲、弾け!!!』
僕は深呼吸をして、必死に心を宥(なだ)め落ち着かせる。
此処には、母はいない。
僕の怖れるものはない。
まるでそれは防御の呪文。
言葉は力となり、僕の心に安定した力を漲(みなぎ)らせる。
いつものように…僕の内部に踏み込ませない、心を隠す壁を作り出す。
くっと唇を噛み締め、前方を睨み付けた時、母の手は……悪臭放つ蔓の姿に戻った。