シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


此処の世界には、"エディター"の怨念じみた声が反響している。


次第に声は、ヘドロの様な悪臭を放ついばらの蔓へと姿をかえ、触手のようにくねくねと蠢いて僕を誘いはじめる。


それはまるで、僕を手招く…母の手首のように。


一瞬…僕の悪夢だと思ってしまった。


そして、蔓は…その動きだけではなく、外貌を僕の母に変えていく。


多くの母が僕に笑いながら、ゆらゆらと身体を揺らめかせながら、ゆっくりと僕を手招きし始めたんだ。


――禍々しく。


「……!!!?」


僕の心が、途端に動揺して忙しく…乱れだす。


どくん、どくん。


僕の心臓が、怖れに悲鳴を上げて鳴り響く。



――カワイイレイ…。


ここは!!!


――サア……


"エディター"の世界で!!!



――オカアサマノトコロニオイデ?




『玲!!! "エディター"の防衛本能が、お前の"不安"に擬態しているだけだ!!! 此の領域ではまだ、お前の世界と繋がっていない!!! 偽りだ!!』



――レイハ…オカアサマモノ。


『玲、弾け!!!』



僕は深呼吸をして、必死に心を宥(なだ)め落ち着かせる。


此処には、母はいない。

僕の怖れるものはない。


まるでそれは防御の呪文。


言葉は力となり、僕の心に安定した力を漲(みなぎ)らせる。


いつものように…僕の内部に踏み込ませない、心を隠す壁を作り出す。


くっと唇を噛み締め、前方を睨み付けた時、母の手は……悪臭放つ蔓の姿に戻った。

< 854 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop