シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
視る器官である"目"は依然変わらないのに、そこから流れ込んでくる映像は、何と不確かなものなのか。真実以外の映像まで拾ってくる。
いやに…疲れた気がする。
肉体的にどうのというより、精神的に疲れる。頭が重い。
『玲、無理するなよ。より長く、より深くこの世界に馴染めば馴染むだけ、お前自身に負担がかかるからな。同化するなよ、油断すれば取り込まれる』
"同化"
多分、紫茉ちゃんには判っているのだろう。
この世界に染まり易い、僕の色。
それは"エディター"の攻撃だけではなく、受け側の僕にも問題がある。
拒みきれない弱さが、僕にはある。
通じる世界が、僕にはある。
僕の輪郭は、曖昧すぎるから。
ある意味――
僕の存在自体、既にこの世界に溶融しかかっているということか。
この世界の持ち主は、そんな僕の存在を認識しているのだろうか。
異物とも思えぬ、同種のものが侵入した形跡を…感じているのだろうか。
『当人が認識できる範囲は、意識の部分だ。深層部分でこちらを認識できる奴は、会ったこともない。朱貴でさえ、意識レベルだったからな』
紫茉ちゃんが言った。
『あたしは過去幾度、知らない人間の心…夢の中に潜ったけれど、ここまでどろどろとした世界は初めてだな。何より押さえ込んだものがあまりに多く、雑多すぎる。そしてここは底だと言うのに、奥に奥にと更に深層が広がり、進めば進むほど攻撃的な念が強まっている気がする。
普通とは違う世界構成も何か変だし、嫌な予感はするしで…出来れば、退き返したい位だ』
そんなものと、僕は"同種"だとは思いたくないけれど。
歩みを止めぬ僕の足。
紫茉ちゃんが危惧する"奥"のドアを幾つも開いていけど、まだ終点は見えない。
無意識領域の底辺では人間の意識は繋がっていると紫茉ちゃんが言っていたけれど、この"エディター"の無意識をドアを全て抜けねば、普遍的な繋がりを持つ…原始の無意識には出れない気がした。
ドアを開ければ開ける程…瘴気とも似た澱んだ空気は更に濃度を増し、気分が悪くなる。
紫茉ちゃんは、自分の意思でドアにしたというけれど、こんなに暗黒を奥に控える入り口ならば、見るに耐えない様相だったと想像した。