好きって言って!(短編)
「吉成くんて、西園まりえと面識あったっけ?」

和泉が首を傾げながら言う。

知らない。
そんなの、聞いてない。

「あ、こっち来る」

まりえちゃんは淳也に手を振ると、私たちの前を通って教室を出て行った。

「うわ、ちっさー。
そのくせ出るとこ出てるー。
男ウケ良さそー」

和泉の口から出る感嘆は、いちいち私と正反対。

そうだ。
浮かれてて忘れてた。

淳也が好きなのは、ああいう子なんだよ。

「つーか淳也、お前にやけ過ぎ」

ふと、教室の中から声が聞こえた。

内容から、淳也と友達の会話だと分かる。

「いくらカノジョと上手くいったからって、浮かれてんじゃねーぞ」

その言葉に、私の体は凍りついた。

カノジョ…?

上手くいった…?

「ほっとけよ。
ずっと惚れてたやつと、やっと両思いになれたんだから」

しれっと言う淳也の声に、私の足がガクガク震え出す。


何、今の。

両思いって…。

「そーいや淳也、前に雑誌に載ってるって教えたら、購買部まで買いに走ってたもんな」

「一途過ぎてウケる」

「うるせーな」

淳也は面倒臭そうに言ったけど、顔は正直だった。

今まで見たことないくらい、真っ赤になっていた。

その瞬間。

私は思わずその場から駆け出していた。

それ以上、照れた淳也を見たくなかったから。
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