胸の音‐大好きな人へ‐
艶のある甘い声に、
優しい気遣いに、
知的で色香のある雰囲気に、
最終的には溺(おぼ)れていった。
最初にどっちから告白したか、なんて、いざ付き合ってみたらまったく関係なくなるんだ。
そんなことも分からなかった俺は、
『藍から告白してくれたんだから、藍も俺のことを大好きでいてくれるに決まってる』
と、100%信じて疑わなかった。
少ないこづかいをやりくりして、休みのたびにデートした。
平日の帰りは、藍の部活が終わるのを校門前で待って毎日一緒に帰ったり。
昼休みにも、顔が見たくて藍の教室まで出向いたりして。
俺が夢中になればなるほど藍の気持ちが冷めていたなんて、1ミリも気付かずに……。