胸の音‐大好きな人へ‐

「受験に集中したいから、もう別れよ。

本当にごめんね」

中学3年になる前の春休み。

駅前でいつも通り藍と待ち合わせてその後は買い物デート、と思ってたら、挨拶代わりとでもいうようにサラリと別れを告げられた。

「受験に集中したいんなら、しょうがないな……。わかった」

――受験の邪魔はしないから、別れたくない――

そんな気持ちも湧いたけど、藍があまりにも苦しそうな顔をするから、別れに納得するしかなかった。



――中学3年になってしばらく経った頃。

登校した俺が昇降口でうわばきに履き換えてると、下駄箱の反対側で、藍とその友達っぽい女子の声がした。

彼女たちも今登校してきたみたいだが、俺が反対側のロッカーに靴をしまおうとしてることなんて気付いてないんだろう。

「圭君と別れたんだー」

「うん。なんかねー、イメージと違ったし。

圭はもっとクールで爽やかな人だと思ってたから告ったのに、しょっちゅうベタベタしてきて、メールもたくさん送ってくるし、めんどくさくなってさー。

つーか、あんなマジになられると思ってなかったし」

< 22 / 74 >

この作品をシェア

pagetop