胸の音‐大好きな人へ‐
「受験に集中したいから、もう別れよ。
本当にごめんね」
中学3年になる前の春休み。
駅前でいつも通り藍と待ち合わせてその後は買い物デート、と思ってたら、挨拶代わりとでもいうようにサラリと別れを告げられた。
「受験に集中したいんなら、しょうがないな……。わかった」
――受験の邪魔はしないから、別れたくない――
そんな気持ちも湧いたけど、藍があまりにも苦しそうな顔をするから、別れに納得するしかなかった。
――中学3年になってしばらく経った頃。
登校した俺が昇降口でうわばきに履き換えてると、下駄箱の反対側で、藍とその友達っぽい女子の声がした。
彼女たちも今登校してきたみたいだが、俺が反対側のロッカーに靴をしまおうとしてることなんて気付いてないんだろう。
「圭君と別れたんだー」
「うん。なんかねー、イメージと違ったし。
圭はもっとクールで爽やかな人だと思ってたから告ったのに、しょっちゅうベタベタしてきて、メールもたくさん送ってくるし、めんどくさくなってさー。
つーか、あんなマジになられると思ってなかったし」