胸の音‐大好きな人へ‐
うそだろ……。
いま、何て言ったの? 藍……。
あれは、俺の知ってる藍なの?
うそだ。
うそだ。
聞き間違いだ……!
無防備な時に、夜道で突然背後から鉄の棒で殴られたような気分になる。
「へー! 圭君て甘系なんだ。意外ー」
「何なら、アンタが付き合うー?」
「えー、やめてよー。友達の元カレって気まずいしー。
っていうか、外見だけの人に興味ない。中身も大事じゃん」
「だよねー。
早めに圭の本性が分かってよかったぁ。
高校行くまで付き合ってたら、別れる時もっとメンドーなことになっただろうし」
……いま振り返れば、よく分かる。
藍は俺のこと好きでも何でもなくて、ただ、俺の外見から放たれる印象だけに興味を持って告ってきただけだったってことが。
でも、当時の俺はそこらへん無知で、藍は二重人格の持ち主なんじゃないかって本気で疑った。
付き合ってた時は、優しさのかたまりみたいだった藍。
わざわざ手作りのお菓子作って持ってきてくれたこともあった。
そんな藍が、友達相手にあんな陰口叩くわけない!