胸の音‐大好きな人へ‐

その日を境に、春佳と話すことが増えた。

初めて春佳と話した次の日も、当然のように補習がある。

シンとした教室の中でプリントと向き合うのも将来とか大学入試のために必要なことだって分かってるけど、充実感っていうより義務感しか感じられない。

勉強がつまんなくなると、春佳と会話した時のことを繰り返し思い出してた。


初めて話したって思えないくらい、楽しかったなぁ。


普段女子の集団と話すことはよくあるけど、あんなに長時間(?)特定の誰かと話したのは久しぶりな気がする。


春佳のヤツ、今日も近所の子とプール行くって言ってたけど、帰りにこっち寄ってくんないかなー。

そんなほのかな期待は叶い、

夏休み中、春佳は毎日、俺の補習が終わるのを校門の外で待っててくれるようになった。

街路樹の葉が深緑に染まる雨の日も、

青空の中で飛行機雲と入道雲が重なる清々しい晴れの日も。

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