しゃぼん玉


ここは穂積家。

市内の借家。

間取りは、六畳の部屋が二つ。

台所、トイレ、浴室は隅に取り付けられている。


メイは、閑散(かんさん)としたこの家屋の鍵を乱暴な手つきで開け、玄関の扉を開いた。

二部屋ある居住スペースのうち、一つがメイの部屋なのだか、彼女はここではあまり寝食をしない。

玄関にある男物の靴を見て、外に引き返した。

“また”母親が男を連れ込んでいる……。


メイは、母親の穂積翔子(ほづみ·しょうこ)と二人暮らしだ。

母子家庭。

メイが小学四年生の時に、翔子は夫(メイの実の父親)と離婚をした。


“はぁ……。

ババアのヤツ、また男連れ込んでやがる。

キモ……”

内心毒づき、街に出る。

さきほど、星崎ミズキから金をかすめといてよかったと思った。

“これで今夜は、人んち行かなくて済むや……”

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