しゃぼん玉
翌朝。
大学へ行くためミズキが家を出ると、そこにはナナセの姿があった。
約束していないのにナナセがいて、ミズキはかなり驚き、
「おはよう。
ナナセ君。
どうしたの?」
「昨日、穂積メイって子の話聞いて心配だったから……。
途中まで、一緒に行こ?」
「うん」
暗かったミズキの気持ちは、少しだけあたたかくなった。
ミズキはナナセの手を取る。
ナナセの心臓はドキッとした。
二人の顔に、秋の朝の日差しが当たる。
ナナセはミズキの手の熱に頬を赤くし、
「今日は、授業昼までだよね?」
「うん」
「じゃあ、帰り大学まで迎えに行くよ」
「そんな、いいよ、
別にっ」
ミズキは微笑して両手を小さく左右に振る。
「遠慮してたらダメだよ。
ミズキちゃんを、危ない目にあわせたくないから……」
ナナセは真剣な瞳でそう言った後、今日は自分も午後から授業がないから嬉しいと口にした。