しゃぼん玉
シュンは渋い表情で頭に片手をやり、
「それだったらいいんだけど、まだ気になることがあってさ……。
宇都宮さんさ、たしかに格好だけ見たら弁護士ぽかったけど、弁護士バッジ、してなかった」
「………………」
シュンの発言に、ミズキの胸は嫌な感じで高鳴った。
視界を占領する薄暗い闇が、頭にまで浸透してくる。
みんなただならない気持ちになったが、マナだけが対抗した。
「そんなの、ただ着け忘れてるだけだよっ!
だって、宇都宮さんはリク君と穂積さんに名刺渡したって言ってたしっ……!」
ナナセはアゴに手を当て、
「弁護士は、仕事中はバッジを着けなくてはいけないって規定があるらしいよ?
若い弁護士さんの中には、移動中だけ着けないって人もいるみたいだけど……」
ナナセの父には、古くから付き合っている弁護士の友人がいるのだが、その人はよく、
「バッジを着けずに仕事をするなど、司法に携わる者として言語道断だ!」
と、強く言っているらしい。
だが、そのことだけで宇都宮の正体を疑っていいのかどうか分からず、ナナセはどっちつかずな考えでいた。