しゃぼん玉
菜月は声を震わせ、ミズキに尋ねる。
「ミズキ……。最近悩んでるような感じだったけど、もしかしてそのことを考えてたの?
リョウをイジメた穂積さんの、虐待のことを……」
「うん。そうだよ」
前とは違う、まっすぐな目でミズキは言った。
「前、お母さんに、虐待について訊いたことがあったよね。
あの時、『大学の講義で先生が虐待の話をしてた』って言ったけど、嘘なの。
ごめんね……。
でも、わかってほしい。
最近、ずっと悩んでた。
本当に穂積さんを助けていいのか。
そんなことをして後悔しないか。
こんな考えを持つなんてリョウの姉失格なんじゃないか、って。
警察に行けば気が晴れるのかなって考えたこともあった。
でも、それって、自分のことだけ考えた結果だよね?
人のこと……穂積さんのことは何一つ考えていないよね、警察に頼るなんてさ……」
ミズキは、メグルから聞いた彼女の祖父母の話をした。
戦後……昭和初期の日本は、当たり前のように人と人が助け合い、あたたかな人間関係を築いていたのだということを。