しゃぼん玉
リクの母·正美に待ち伏せされていたメイは、正美と共にS高近くの喫茶店に来ていた。
馴染みの客しか入らなさそうな、ずいぶん古い店だ。
前からこの店の存在を知っていたメイも、中に入ったのは初めてだったし、今後二度と来ることはないだろうと思う雰囲気である。
わずかに夕日が射す薄暗い店内。
正美は、出入口付近のカウンター内にいるこの店のマスターらしき男性の視線から逃れたがっているように、一番奥のひっそりしたテーブル席に座った。
メイは、正美の向かい側へ座るように促される。
油が付着してべとついたテーブル。
タバコの煙のせいか、ひどく黄ばんでいる白い壁。
店内の窓から見える表の通路にはたくさんの人々が行き交っているのに、この店に客が一人もいないのは不思議であり、不気味でもあった。