しゃぼん玉
リクは滝川家に到着した。
走りっぱなしで息があがっていたし、寒い夜空の下にいるにも関わらず、額に汗がにじんでいた。
滝川家の古い母屋の茶色い木製の壁は黒ずんでいたが、その存在感は、この暗い夜の中にくっきりと浮かび上がっている。
雑草がわずかに生えている玄関先を踏みしめ、呼び鈴ボタンを押そうとしたのだが、それを遮るように玄関の扉がスライドし、中からメグルが飛び出してきた。
「うわっ!!」
メグルの登場に驚き、リクは素っ頓狂な声をあげてしまう。
「リク君……!
こんなところで、どうしたのっ?」
メグルもメグルで、玄関前に佇むリクに驚いていたが、彼がメイに会いに来たのだとすぐさま察し、
「メイ、まだ帰ってきてないよ。
これから、じいちゃんと一緒にこの辺探しに行くとこなんだ」
だが、そんなメグルの声はリクの耳には届いていない。
彼は、滝川家に訪ねてきた理由をメグルに話すことなく、メイがここに居ないと知った瞬間、別の場所へ駆け出していた。
「リク君! メイに会いに来たんじゃないのっ!?」
メグルの呼びかけも、リクの頭には入っていない。
“まだ帰ってきてなかったんだ……!
メイ、どこにいる!?”
そう思ったら、いても立ってもいられなくて……。