しゃぼん玉

メイは彼らの背後に立ち、

「へぇ。で、他には何してもらうの?」

少年二人は振り返り、見知らぬ女子高生のずぶ濡れの姿に、小さく悲鳴をあげた。

メイは、誕生日に父親からプレゼントを買ってもらうと話していた少年の腕を強く引っ張る。

もう一人の少年は、メイの行動に恐怖を感じ、逃げ出してしまった。

「待ってよぉ!!」

メイに腕をつかまれた少年は涙目で友達を引き止めたが、彼はメイに恐れ、「ごめん!」と言い、逃げていった。


メイは彼らのやり取りには全く興味がないといったように、表情のない顔で少年を公園内に引きずっていく。

少年はメイに捕まった不安感から傘を手放してしまい、震えて声も出せなくなっていた。


メイは泣きじゃくる少年を、濡れた砂場に突き飛ばす。

少年は「いたい!」と甲高い声を上げた。

「こんな時間に出歩いてるやつが悪いんだよ」

メイは、うつぶせに倒れ込んだ少年の背中に勢いよく片足を置いた。

そのまま上体を屈めて地面に近付き、片手で砂をつかむ。

濡れた砂は、皮膚にはりついてうまく手に取ることができない。

降りしきる雨によって、つかんだ砂も手から流れ落ちてしまう。

< 527 / 866 >

この作品をシェア

pagetop