しゃぼん玉

リクはつかんでいたメイの腕を離す。

「そっか……。

そうだよな。メイ、ずっとつらかったもんな。

なのにそんな話聞いたら、イラッとするよな……。


俺、その気持ちよくわかる。

ずっとメイのこと見てたから」

「……るだよ」

「え?」

メイの声が小さかったので、リクは聞き返した。

霧雨が風の流れに乗って真横に飛ばされている中、メイはにらみつけるようにリクの方を見た。

「何が『わかる』だよ!

親に大切に大切に育てられたあんたに、私の気持ちがわかるはずがない!!


あんたは毎月おこずかいもらって、毎日おいしい手料理食べて、着たい洋服買ってもらって、親に頭なでられて、そういう人生送ってきた!!

そんなあんたに、私の何がわかる!?


あんた、母親にご飯を無理矢理口に突っ込まれたことあるか?

ガラスのコップ投げつけられたこと、一度でもあんの?

風呂に入って熱湯かけられたことがあった?

ゴミ箱の中に顔突っ込まれたり、クローゼットの中に閉じ込められたりしたことがあった!?」


リクは、今まで見たことのないメイの激昂(げきこう)に血の気を失い、めまいがしそうになる。

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