しゃぼん玉
メイはリクの胸元に拳を打ち付け、気持ちを吐き出し続けた。
「私は、親が二人いた時からそういう生活してたんだよ!
あいつらが離婚した後は、もっとひどかった」
メイは、母·翔子に毎晩のように殴られ、蹴られていたことを思い出していた。
「ババアの存在が何より怖かった。
毎日毎晩、体が痛かった……」
リクは、翔子によって荒らされていたメイの部屋を思い出し、ノドから苦味が込み上げてくるのを感じた。
泣くのを我慢できないまま、メイの顔をまっすぐ見つめる。
メイはリクの視線を攻撃するように刺々(とげとげ)しい口調で、
「実の母親に、体を………。体を売らされようとしてたんだよ……。私は。
宇都宮だって、やっと信じられる大人だと思ってたのに。
私の体をどうにかするために私に近づいてきたんだ。ババアに雇われてね。
あんたは、親にそういうことされたことがある?
一度だってないだろ!!」
「メイ、宇都宮のこと……!!」
リクは、メイが宇都宮のことを知ってしまったことに、目の前が真っ青になる思いだった。
“メイ……!”
そして、宇都宮の正体までは知らなかったリクも、今のメイの言葉で、宇都宮が危ない目的でメイに近づいたのだということを知った。