しゃぼん玉
初めて声に出されたメイの苦しみ。
悲しい過去。
翔子がメイにどう接してきていたのか、リクはだいたい想像できていたが、こうしてメイ本人に虐待の詳細やその時の気持ちを聞くと、その重さで、窒息しそうなほど胸をしめつけられる。
メイが一人で耐えてきた、母親による虐待。
子供時代の孤独。
両親の離婚。
愛してもらえないことの寂しさ。
血のつながった人間に暴言を吐かれ、殴られ続けることのこわさ。悲しさ。
そういったメイの心の隙間につけ込んだ宇都宮に、リクは怒りを隠せなかった。
弁護士のフリをして正体を偽り、こうしてメイを傷つけたことは、とうてい許されることではない。
「宇都宮さん……。
メイにそんなことしようとしてたなんて……許せない!!
俺がなんとかする!
だからメイはもうメグルちゃんちに戻って!
ミズキちゃんと、その友達のマナちゃん、あと、シュン君とナナセ君も、今、メイのためにいろいろと動いてくれてる。
弁護士がいなくたって、俺らが、おばさんの好きなようにはさせないから……!
メイを助け出してみせるから!」
「あんた、どうして他人のためにそこまですんの?
意味わかんない」
メイはリクの言動を否定的な目でしか見れなかった。
「そうやって人助けごっこして、楽しい?
あぁ……。そっか。
あんたは大学受験ひかえてるしね。
そのストレス発散か、気晴らしってわけか」
メイはリクを見下すような目をして、アゴを突き上げる。