しゃぼん玉
リクはメイに近づき、その雨に濡れた小さな顔を見つめ、
「そんなわけないじゃん!!
遊びとか、受験の息抜きだとか、そんなこと考えてない!
俺もみんなも、メイのこと助けたいんだよ。
一人で苦しむなよ! な!?」
メイは口元だけで小さく笑い、ため息まじりにつぶやいた。
「そんなの無駄だよ。
ババアは変わらない。
この先も私を嫌い続けて、殴って、チャンスがあればまた宇都宮みたいな男を私に近づけてくるよ。
私とあの人は、一生分かり合えることはないんだよ。
あんたも、本当はそんなこととっくに分かってるんでしょ?
だったら変なことしないで、私のことは放っておいてよ。
あんたはあんたのするべきことをしなよ。
帰るべき場所に帰りなよ。
あんたは私とは違って、心配してくれる親がいる。
私なんかにかまってないで、家に帰って勉強でもしてなよ」
メイはリクの母親に渡された大金の重みを感じている。
だがリクは、そんなメイの言葉が本心ではないことくらい、わかっていた。
「メイ、俺さ、受験とか大学に行くことより、メイを助けることの方が大事だって思ってる。
親も大事だよ。
今まで育ててくれたことに感謝してる。
でも、俺は、メイのことを一番に考えたいんだ。
ずっとメイのそばにいたい……。
ううん、いさせてよ!
メイが転校した時、メイと家が離れてすごく寂しかった。
メイと同じ小学校に通えなくなった時も、すごく悲しかった」