しゃぼん玉

メイが心を開いてくれたように感じて、落ちていたリクの気持ちは浮上する。

「そうだよ、メイを助けたい。

俺、何でもするから!!

メイのためになるのなら、なんだって!」

メイは嬉しそうに微笑む。

リクは、幼い頃にしか見られなかった彼女の笑顔にドキンと胸が高鳴り、嬉しい気持ちで満たされる。

メイは湿ったカバンの中から、まだパッケージがついたままの果物ナイフを取り出した。

リクはそれを見て、嫌な予感で背筋が震えた。


そのパッケージをはがして地面に捨てると、メイはナイフを使える状態にする。

「これ、さっき、店で盗んだんだ。

新品だよ」

メイは恍惚(こうこつ)とした表情でそのナイフを天にかざした。

真新しいナイフに、細かな水滴が降り注ぐ。


「なんでもしたい、

私を楽にしたい、

リク、たしかにそう言ったよね?」

「メイ……?」

ナイフの柄(え)をこちらに向けられ、リクは思わず、メイの指先を凝視した。

彼女の細い指先は震えることなく、刃先をつまんでいる。

< 539 / 866 >

この作品をシェア

pagetop