しゃぼん玉
メイが心を開いてくれたように感じて、落ちていたリクの気持ちは浮上する。
「そうだよ、メイを助けたい。
俺、何でもするから!!
メイのためになるのなら、なんだって!」
メイは嬉しそうに微笑む。
リクは、幼い頃にしか見られなかった彼女の笑顔にドキンと胸が高鳴り、嬉しい気持ちで満たされる。
メイは湿ったカバンの中から、まだパッケージがついたままの果物ナイフを取り出した。
リクはそれを見て、嫌な予感で背筋が震えた。
そのパッケージをはがして地面に捨てると、メイはナイフを使える状態にする。
「これ、さっき、店で盗んだんだ。
新品だよ」
メイは恍惚(こうこつ)とした表情でそのナイフを天にかざした。
真新しいナイフに、細かな水滴が降り注ぐ。
「なんでもしたい、
私を楽にしたい、
リク、たしかにそう言ったよね?」
「メイ……?」
ナイフの柄(え)をこちらに向けられ、リクは思わず、メイの指先を凝視した。
彼女の細い指先は震えることなく、刃先をつまんでいる。