しゃぼん玉
義弘と正美は、リクの進路を捩(ねじ)曲げたメイを、どうしても遠ざけたかった。
偏差値が高く、卒業後の就職率も高いN大学。
リクにはそこへ入学してほしかった。
リクも今までは、将来のことにはあまり興味がなかったようで、正美や義弘に言われるがままにN大学の受験を目指し勉強していた。
なのにここへきて、彼は就職して一人暮らしをしたいと言い出した。
義弘と正美は、一人息子のリクに、そんな先の保証がない危ない選択をしてほしくはなかった。
それだけではない。
メイはリクの恋人でもなんでもない。
リクの片想いである。
仮に二人が両想いなのだとしても、正美と義弘は二人の交際を認めるつもりはないが、片想いの相手でしかないメイのために、リクの人生が変わってしまうのは耐えられなかった。
義弘はゆっくり正美の顔を見て、
「リクに家庭教師をつけよう」
「家庭教師?」
正美はポカンと口を開け、目をしばたかせる。
「リクが、これ以上余計なことを考えられないよう、勉強に集中させるんだ。
あまりこういうやり方はしたくなかったが、メイちゃんにお金を渡しても、リクはメイちゃんに会いに行くだろうからな。
それならリクに、メイちゃんと会う時間を作らせなければいいんだ。
うちの大学に、優秀な学生がいる。
彼は私の授業も取ってるんだが、常に成績も上位で、若いのにとても礼儀正しい。
リクの勉強を見てもらえないか、彼に頼んでみる」