しゃぼん玉
そういう経験の中で、ミズキがもっとも忘れられないのは、中学二年生の時に、二つ年上の従兄弟(いとこ)に押し倒されたこと。
抵抗したため、幸い、性行為までは至らなかったが、衣服の上から胸を触られたのはきわめて恐怖だった。
そのあと、当時付き合っていた彼氏·ヒデトのおかげでその苦しい思い出は和らい。
だが、ミズキは今でもたまに電車で痴漢にあうことがあるため、そのたびに、従兄弟との出来事が頭に強く叩きつけられる。
ヒデトと付き合っていた時に、愛を確かめ合うために性行為をして、
『体を重ねて幸せだ、
トラウマを克服できた、
性行為は恋人同士にとって大切なものだ』
という考え方に行き着いたけれど、
ナナセと付き合っていくうちに、それとは違う価値観が積み上げられてゆくのを感じていた。
今までの考え方を否定するわけではないが、新しい自分に出会えた、そんな感覚。
「ナナセ君は、弱くなんかない。
過去のことで罪悪感持つこともないよ。
私にとってナナセ君は、大切な大切な、世界一かっこいい彼氏だよ。
ナナセ君といると、心と心がつながってるって感じられるから。
離れている時も、ナナセ君はここにいる……」
ナナセの腕の中、ミズキは自分の両手のひらを胸元に当てた。