恋心屋
出てきた写真を、置いてあったハサミで切り取って、半分を渡してくれた。


ケータイにも送信した。


ケータイにもデータとして送れるんですよ、最近のは、というのは初めて知ったことだった。


やっぱり僕の表情はかたかったように見える。でも、口元がゆるんでいるようにも見えた。


「また、初めての経験ができましたね」


ひとのことなのに、ミツキさんはとても喜んでくれている。


初めての経験がすべて嬉しいこととは限らない。


数学だって英語だって、初めて知るものが、苦しみにしかないものだってある。


もちろん、事故や死別、ケンカだって、苦しみでしかないだろう。


でも、ミツキさんとプリクラを撮るというのは、僕にとっては嬉しいことだったとおもう。

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