黒猫独語
 訪問介助入浴サービスのスタッフが家から出て行くと、部屋の中は静けさを取り戻した。
 お婆さんはベッドの上に座り、テレビを見ている。床についた、細かいしわと血管の浮いた足首に、クロが頭をすり寄せた。

 最近、撫でてくれへん。
 でもイライラぶつける気にもならん。
 
 あの人たちに風呂入れてもらってるときは、気持ちよさそうな顔、してた。
 
 けど今は、あんまり楽しそうやない。

 いつも一人で、話し相手はたまに家に来るあいつらだけだし。

 婆さん、寂しくないんか?
 
 俺が顔を上げても、婆さんは俺が見ていることに気づかなかった。
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