黒猫独語
 介助スタッフの女性の一人が、タオルにくるまれたお婆さんをバスタブから出そうとすると、ふと視界にクロが入った。

「ちょっとごめんねー」
 と、まるで人間を相手にするかのように言う。するとそこにいたクロは動きだした。

「ちょっとごめんねー」
 おう、こっち来るんか。すまん、邪魔してもうた。
 
 婆さん、足首、細なったなぁ……。それだけやない、体も小さくなった。声も小さくなった。たまに俺の飯(メシ)忘れるから、催促(さいそく)することもある。
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