黒猫独語
 秋から冬に移り変わる、ある雨の日、お婆さんの家に黒い雄(おす)の猫が来てから、一年が経過した。
 
 その間、年のせいで足腰は弱り、お婆さんは家に閉じこもりがちになった。話し相手がいないので口数は少なかったが、クロにさえ声をかけることも極端に減っていった。

 お婆さんには、離れて暮らす息子と嫁、一人の孫がいた。
 嫁は時間をつくって、たまに様子を見るために電話をかけていた。しかし、お婆さんは電話に出ても、簡単で短い話をする程度だった。
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