黒の本と白の本
 少女は言います。
 黒の本を持った女は、その言葉を聞いて白の本を手に入れようと思いました。
 そこで、黒の本を持った女は少女に白の本の場所を尋ねます。
「白の本は今、どこにあるの?」
 その問いに、少女は首を横に振りました。
「教えない。どうしてもその本が欲しいなら、自分で探しなさいよ」
 少女の言葉に、黒の本の女はイライラと唇をかみ締めます。
「生意気な娘だね」
 黒の本の女は耐えられずに、とうとう少女の心臓にナイフを突き立ててしまいました。
 少女は、とても嬉しそうに微笑んで人形のように動かなくなりました。
 黒の本の女が少女からナイフを取り出した時、少女の体が白く光りだしました。
「ぎゃあ」
 あまりの眩しさに、黒の本の女は瞼を閉じました。
「願い事を叶えよう」
 白い光の中から、老人の声が響いてきます。
 黒の本の女は、その声の主を見るために細く目を開きました。
 眩い光の中に立っていたのは、白の本から出てきた老人でした。
 黒の本の女は白の本から出てきた老人を逃がすまいと、必死にその者の袖に縋りつきました。
「ああ、お願いだよ、アタシの願いを叶えてくれ! もう、嫌だ、与えられた願いを使うたびに酷い仕打ちを受ける。心臓がないせいで死ぬ事もできない…お願いだよ、アタシを殺して!!」
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