リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
実際にベットとして活用することは、情けない話だけれど、今まで一度もなかった。
それでも、購入した当時は、来客用のベットとして活用することも考えていたので、あちらこちらを見て回り、しっかりしたウレタン素材のソファーベットを選んだ。
併せてソファーベット専用という滑り止めのついた敷布団も購入したのだけれど、これが出番を迎えたのも、じつは今夜が初めてだったりする。


(この間の大掃除で、干しておいた良かった)
(まあ、干したあとも、このまま、物置の肥しかなあって思っていたけど)
(干したとたん、そうそうに使うことになったわね)


そんなことを考えながら、牧野が入浴している間に、いそいそと牧野の寝床の用意をして、念のためにとその寝心地は確認した。

体を横たえて、ここに眠る牧野のことを考えたら、また顔に火がついて、明子は慌てて飛び起きた。

そのベットに並ぶように座らされて、明子の体は妙な緊張でガチガチに固まってしまった。
そんな明子の緊張など気にもかけていない様子で、牧野はふわふわと楽しそうな声で話しかけてきた。

「なら、引っ越すときは、これはウチに持っていこうな」

サンルームがあるんだ。これ置こうぜ。ごろごろするのに。
思い付きを楽しそうに話しだす牧野に、明子は目をバチクリとさせて牧野を見た。

「引越し?」

なんのことですと言うように、きょとんとした様子で牧野を見ている明子に、牧野はお前なあと言いつつ、ため息をこぼした。
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