リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「なんだよ、その素っ頓狂な声は。あのさ。もう少しさ、前向きに、いろいろ考えてくれねえかなあ」
少しだけ明子を咎めるような声を出し、じろりと流し目で見つめてくる牧野に、明子はどぎまぎとする鼓動を必死に宥めた。
「いや、それは、そうなんですけど、えーと」
やや早口で、バツの悪そうな顔をして言い訳を始めた。
「いきなりとですね、その、いろいろと、状況が一変したからですね。正直、頭と心が追いつけなくてですね」
どうやら自分はこの人とお付き合いすることになるようだと、やっと理解できつつある頭と心なのに、そんなものすらすっ飛ばす勢いで、いきなり結婚を突きつけられた展開に、明子の頭と心は、まだこの状況を現実的に受け止められず、やや混乱しているような状態だった。
そんなことを言いつつ、おどおどと困っているような明子の目に、牧野は仕方がないやつだなと笑う。
「まあ、急展開っちゃ、急展開で悪かったなとは俺も思ってはいるんだけどさ。でもな、もう俺も待ちたくないしさ。春になったら、俺なんか、もう三十五になるんだぞ」
だからさ、ちょいといろいろと急ぎたいから合わせてくれよと、判るような判らないような妙な言い訳をする牧野に、そういうものかと明子も頷いた。
三十代の恋愛は二十代のころのように、ゆっくりと進めていく恋愛ではないのかもしれない。
先を急ぐというよりも、積み重ねた時間により二十代のころよりは引き上げられている経験値が、この先にあるものをより現実的に感じさせて、それに向かって計画的にてんばきと物事を進めてくれるような気はする。
「まあ……、私も年明けたら三十二ですしね。あんまり、のんびりはしてられないかもですけど」
「だろ?」
明子の言葉に、牧野もそうだろそうだろと満足そうに頷いた。
少しだけ明子を咎めるような声を出し、じろりと流し目で見つめてくる牧野に、明子はどぎまぎとする鼓動を必死に宥めた。
「いや、それは、そうなんですけど、えーと」
やや早口で、バツの悪そうな顔をして言い訳を始めた。
「いきなりとですね、その、いろいろと、状況が一変したからですね。正直、頭と心が追いつけなくてですね」
どうやら自分はこの人とお付き合いすることになるようだと、やっと理解できつつある頭と心なのに、そんなものすらすっ飛ばす勢いで、いきなり結婚を突きつけられた展開に、明子の頭と心は、まだこの状況を現実的に受け止められず、やや混乱しているような状態だった。
そんなことを言いつつ、おどおどと困っているような明子の目に、牧野は仕方がないやつだなと笑う。
「まあ、急展開っちゃ、急展開で悪かったなとは俺も思ってはいるんだけどさ。でもな、もう俺も待ちたくないしさ。春になったら、俺なんか、もう三十五になるんだぞ」
だからさ、ちょいといろいろと急ぎたいから合わせてくれよと、判るような判らないような妙な言い訳をする牧野に、そういうものかと明子も頷いた。
三十代の恋愛は二十代のころのように、ゆっくりと進めていく恋愛ではないのかもしれない。
先を急ぐというよりも、積み重ねた時間により二十代のころよりは引き上げられている経験値が、この先にあるものをより現実的に感じさせて、それに向かって計画的にてんばきと物事を進めてくれるような気はする。
「まあ……、私も年明けたら三十二ですしね。あんまり、のんびりはしてられないかもですけど」
「だろ?」
明子の言葉に、牧野もそうだろそうだろと満足そうに頷いた。