リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「ほれ。背中、こっちに向けろって」
本気で肩を揉みだしそうな様子の牧野に、明子は「いや、ホントにいいです」と逃げ出すように腰を浮かせるが、牧野の手がそれを阻むように浮いた腰に回された。
「小杉。なあ、頼むからさ。少しはエロいことさせろよ」
「なんで、その顔でそういうことを言うんですかっ もう」
「バカ。この顔で言うからいいんだろうが。エロい顔したおっさんが、エロいこと言ったって、面白くもねえだろう」
そういう問題じゃないんですと、明子は肩を落として項垂れた。
この男に幻想と夢を抱いている乙女たちに、この男はロクデナシの王子様だと、声を大にして訴えてやりたい気分だった。
結局、牧野に促されるまま背に向けることになってしまった明子は、肩に牧野の手を感じただけできゅうっと体に力が入ってしまう有様になった。
「力抜けって。俺の指を壊す気かよ」
大丈夫だから、そんな警戒すんなよ。
牧野のやや呆れ交じりの苦笑を感じつつも、なかなか肩の力を抜くことが明子はできずにいた。
(だって、だって、だってっ)
(こういうスキンシップ、慣れてないもんっ)
(いきなり、こんなん、むりーっ)
(牧野のばかーっ)
胸中ではそう吼えながら、牧野が肩や肩甲骨周辺をほぐすように、ゆっくりと手のひらで撫で押すと、次第にその温もりの心地よさに明子の緊張がほぐれていった。
牧野の指が、確実にツボを捉えて、肩や背中を解していく。
少しずつ、そこに固まっていた悪い血が流されていくようなすっきり感が広がり、ふわりとした眠気さえ覚えるようだった。
本気で肩を揉みだしそうな様子の牧野に、明子は「いや、ホントにいいです」と逃げ出すように腰を浮かせるが、牧野の手がそれを阻むように浮いた腰に回された。
「小杉。なあ、頼むからさ。少しはエロいことさせろよ」
「なんで、その顔でそういうことを言うんですかっ もう」
「バカ。この顔で言うからいいんだろうが。エロい顔したおっさんが、エロいこと言ったって、面白くもねえだろう」
そういう問題じゃないんですと、明子は肩を落として項垂れた。
この男に幻想と夢を抱いている乙女たちに、この男はロクデナシの王子様だと、声を大にして訴えてやりたい気分だった。
結局、牧野に促されるまま背に向けることになってしまった明子は、肩に牧野の手を感じただけできゅうっと体に力が入ってしまう有様になった。
「力抜けって。俺の指を壊す気かよ」
大丈夫だから、そんな警戒すんなよ。
牧野のやや呆れ交じりの苦笑を感じつつも、なかなか肩の力を抜くことが明子はできずにいた。
(だって、だって、だってっ)
(こういうスキンシップ、慣れてないもんっ)
(いきなり、こんなん、むりーっ)
(牧野のばかーっ)
胸中ではそう吼えながら、牧野が肩や肩甲骨周辺をほぐすように、ゆっくりと手のひらで撫で押すと、次第にその温もりの心地よさに明子の緊張がほぐれていった。
牧野の指が、確実にツボを捉えて、肩や背中を解していく。
少しずつ、そこに固まっていた悪い血が流されていくようなすっきり感が広がり、ふわりとした眠気さえ覚えるようだった。