リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「君島さんも、勉強させるつもりで様子をみていたそうだ」
「その親心が、最悪の裏目になって、しかも、最悪の結果に繋がってしまったと?」
「おう。あのバカ。今回の昇進試験も受けるつもりらしいからな。凝りもせずに。だから、君島さんも、あいつに箔つけさせてやろうって、デカい仕事を任せてやったっていうのに」
「凝りもせずって。いいじゃないですか。試験くらい、好きなだけ受けさせてやれば」
「ありゃ、主任止まりだよ。その証拠に、肝心なときにあの有様で入院してるじゃねえか。推薦なんか貰えるもんか」
「それは……まあ、それだけ面倒なお客様だったわけで」
「違うって。アイツ、君島さんから、いよいよダメらしいから後は頼むなって、そう言われたとたん、胃が痛いって始まったんだとよ。トイレで血を吐いたらしいって話だったけど、ありゃ、話が勝手にデカくなっただけらしいぞ。ただの神経性胃炎だそうだ。穴なんか開いてもいねーらしい」
「……さいてい」
ぼそりと、明子はそう吐き出した。
(性格悪くて、肝っ玉も小さくてって)
(そりゃ、確かにね、主任止まりだわね)
(というか、それで部課長とかになられたら、下につく社員が大変)
(昔はもう少し、見所のある人だったのになあ)
(うざいところはあったけど、それでも、牧野と張り合っていた人だったのに)
牧野の説明に、さすがの明子も大塚に対して乾いた笑いをこぼすしかなかった。
「なんでな。今回だけが、特別にひどいってわけじゃないらしい。沼田に聞いたら、あそこは前のときもあんな感じでしたけどって、ケロっとしてたよ。ただ、今回は君島さんが仕切ってないから、吸い上げ作業の時点で難航してるように見えているだけですってな」
「沼田くんだけで乗り切れませんかね。明日」
なんとなく、思いつきで明子はそう言うと、武士の二言は認ねーぞと牧野は切り替えしてきた。
(武士ってね、おい)
明子はあからさまに、牧野の台詞に顔をしかめてみせた。
「その親心が、最悪の裏目になって、しかも、最悪の結果に繋がってしまったと?」
「おう。あのバカ。今回の昇進試験も受けるつもりらしいからな。凝りもせずに。だから、君島さんも、あいつに箔つけさせてやろうって、デカい仕事を任せてやったっていうのに」
「凝りもせずって。いいじゃないですか。試験くらい、好きなだけ受けさせてやれば」
「ありゃ、主任止まりだよ。その証拠に、肝心なときにあの有様で入院してるじゃねえか。推薦なんか貰えるもんか」
「それは……まあ、それだけ面倒なお客様だったわけで」
「違うって。アイツ、君島さんから、いよいよダメらしいから後は頼むなって、そう言われたとたん、胃が痛いって始まったんだとよ。トイレで血を吐いたらしいって話だったけど、ありゃ、話が勝手にデカくなっただけらしいぞ。ただの神経性胃炎だそうだ。穴なんか開いてもいねーらしい」
「……さいてい」
ぼそりと、明子はそう吐き出した。
(性格悪くて、肝っ玉も小さくてって)
(そりゃ、確かにね、主任止まりだわね)
(というか、それで部課長とかになられたら、下につく社員が大変)
(昔はもう少し、見所のある人だったのになあ)
(うざいところはあったけど、それでも、牧野と張り合っていた人だったのに)
牧野の説明に、さすがの明子も大塚に対して乾いた笑いをこぼすしかなかった。
「なんでな。今回だけが、特別にひどいってわけじゃないらしい。沼田に聞いたら、あそこは前のときもあんな感じでしたけどって、ケロっとしてたよ。ただ、今回は君島さんが仕切ってないから、吸い上げ作業の時点で難航してるように見えているだけですってな」
「沼田くんだけで乗り切れませんかね。明日」
なんとなく、思いつきで明子はそう言うと、武士の二言は認ねーぞと牧野は切り替えしてきた。
(武士ってね、おい)
明子はあからさまに、牧野の台詞に顔をしかめてみせた。