リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
目の前の口論から、明子が推測した限りでは、なぜそんな仕組みになっているのか、その理解しがたい不可解な謎はさておき、どうやら、この会社の総務部は、各課ごとに社員情報を独自に管理しているらしい。
当然ながら、実務に当たる社員たちには不便極まりない。
異動の情報が、総務課や経理課の社員情報に反映されない。
退職の情報が、人事課や経理課の社員情報に反映されない。
新入社員や中途採用者の情報を、人事課の社員情報から総務課の社員情報に反映させたいときには、その情報を持ち出すための手続きが必要で。
人事考査に必要な勤務情報などを人事課が欲しい場合は、これも手続きをとって総務課かに出してもらわなければならず。
経理課も同様の手続きをとり、人事課や総務課から情報を得なければならない。
しかも、各課のデータそのものに、全く統合性がない。
驚いたことに、人事部、総務部、経理部で、社員それぞれに社員IDを割り振り、管理しているというのである。
当然ながら、よその課の情報の反映させる作業は、担当社員が一件一件手作業で行うことになるため、膨大な時間がかかる。。
月末、あるいは月初などに、社員の所属部署や勤務状況など、他の課が保有しているそれらの最新の情報を自分のところの情報に反映させるために、出して貰った情報の登録、更新作業に、実務担当社員たちは追われているのである。

なんて、面倒なことをしているのよと、明子ですら思う。


-各課毎に管理している社員情報をなんとか一本化して、仕事の効率性があがる社員管理システム作ってくれよ。


そんな要望が、実務に当たっている社員たちから上がり続けているのは、当然のことだろう。
そして、今回、ようやく、それに手をつけようということになった。
ということで、各課から要求要望を聞き出して吸い上げようというのが、この打ち合わせにおけるこちら側の目的だった。

が、その目的地に未だたどり着けず、打ち合わせは迷走していた。
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