リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「で。なにを警戒していたの? 大塚さんがなんだって言うのよ?」
もくしゃくと、明子は小ぶりのおにぎりを頬張りながら、隣でクリームパンをもそもそと食べ始めた沼田に、先ほど打ち切った話の続きを促した。
よくよく考えれば、この一件はあの大塚が牧野に仕掛けてきたことだ。
隙あらば牧野を蹴落とそうと企む大塚が、同じように牧野を快く思っていない吉田と手を組んで、仕掛けてきたことなのだ。
明子には知らされていない事実が潜んでいても、おかしくなかった。
いや、実際に潜んでいた。
吸い上げられていない要求など、なかった。
仕事の進捗は確かに遅れているのかもしれないが、それでも、それは君島が問題ないと断言できるていどのものなのだろう。
掌握できた現状から、そう判断できた。
目的は判らないけれど、大塚がそれを隠蔽し、そして、君島はそれを知りながら気づいていないふりをしていた。
明子の推測では、牧野もおそらく知っているはず。
けれど、昨日、牧野は吸い上げ作業自体が難航していると言った。
吸い上げてこいと、明子をけしかけた。
苦くて重いものが、胸にこみ上げてきた。
きな臭いイヤなものが裏にあると、それくらいのことは考えるべきだったと、明子は熟慮の足りなかった自分を悔やんだ。
この会社ほどではないけれど、明子の勤める会社でも、主導権争いや出世争いのようなものは確かにある。
ここまで激しい対立を見ることはないけれど、もちろん派閥だってある。
どう足掻いてもこれより上など望めないと、そう諦めている明子は、そんなものには全く関心はないけれど、それでも社内の勢力図くらいは頭の中に入っている。
だからこそ、そんなことに利用されるのはごめんだと、明子は腸をぐつぐつと滾らせていた。
(鬼がでるか、蛇がでるか)
(牧野メ、場合によったら、引っ叩くからね)
(グーのパンチを、喰らわせてやる!)
そんな怒りを、明子は腹の底でふつふつに煮えたぎらせた。
もくしゃくと、明子は小ぶりのおにぎりを頬張りながら、隣でクリームパンをもそもそと食べ始めた沼田に、先ほど打ち切った話の続きを促した。
よくよく考えれば、この一件はあの大塚が牧野に仕掛けてきたことだ。
隙あらば牧野を蹴落とそうと企む大塚が、同じように牧野を快く思っていない吉田と手を組んで、仕掛けてきたことなのだ。
明子には知らされていない事実が潜んでいても、おかしくなかった。
いや、実際に潜んでいた。
吸い上げられていない要求など、なかった。
仕事の進捗は確かに遅れているのかもしれないが、それでも、それは君島が問題ないと断言できるていどのものなのだろう。
掌握できた現状から、そう判断できた。
目的は判らないけれど、大塚がそれを隠蔽し、そして、君島はそれを知りながら気づいていないふりをしていた。
明子の推測では、牧野もおそらく知っているはず。
けれど、昨日、牧野は吸い上げ作業自体が難航していると言った。
吸い上げてこいと、明子をけしかけた。
苦くて重いものが、胸にこみ上げてきた。
きな臭いイヤなものが裏にあると、それくらいのことは考えるべきだったと、明子は熟慮の足りなかった自分を悔やんだ。
この会社ほどではないけれど、明子の勤める会社でも、主導権争いや出世争いのようなものは確かにある。
ここまで激しい対立を見ることはないけれど、もちろん派閥だってある。
どう足掻いてもこれより上など望めないと、そう諦めている明子は、そんなものには全く関心はないけれど、それでも社内の勢力図くらいは頭の中に入っている。
だからこそ、そんなことに利用されるのはごめんだと、明子は腸をぐつぐつと滾らせていた。
(鬼がでるか、蛇がでるか)
(牧野メ、場合によったら、引っ叩くからね)
(グーのパンチを、喰らわせてやる!)
そんな怒りを、明子は腹の底でふつふつに煮えたぎらせた。