リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「あれって、大塚さん発信だったの? 私、第二にきたのがこの春からだから、てっきり前々からそう言われていたのかと思ってた」
主に木村経由で聞かされた噂話だったが、大塚が自分の株をあげるために流布させたものとは明子は思ってもいなかった。
なんてことをしているんだかと大塚の所業に呆れながらも、沼田が見せた感情に引きずられないよう、明子は自分を戒めた。
ここで下手に同調してしまうと、ことの本質を見誤ってしまいそうな、そんな気がした。
「魔の土建屋みたいなことを、あれこれ言っていたのって、ほとんどが僕より後輩の社員でしょう。彼ら、ここの会社の事なんて、ロクに知らないじゃないですか。川田主任や村田さんあたりの社員は、笑って取り合わなかったんじゃないですか、そんな話」
普段と変わらない明子の口調に、沼田もまた自分を取り戻したのか、また一つ深呼吸をしてからしゃべり始めた沼田は、いつもの沼田だった。
沼田の言葉に、木村があれこれと話していたときのことを思い返した明子は、確かに沼田より先輩格にあたる彼らは、木村の話など歯牙にもかけず笑っていたことを思い出した。
(木村くん)
(よくも、そんな余計なことを、あたしにまで吹き込んでくれたわね)
(全く、まんまと、大塚のバカに利用され……)
はたりと、明子の耳に、沼田のあの言葉が蘇った。
-大塚さんに利用されているのかもしれない
沼田は、確かにそう言った。
大塚とは犬猿の仲の牧野の部下である明子に、大塚にまんまと利用されて、まるで片棒を担いでいるのではないかとさえ疑っているような顔で、そう明子に言った。
まさかと思いつつ、明子は怖ず怖ずと沼田に確認する。
「もしかして、『魔の土建屋』伝説を広める手伝い、うっかりやっちゃったおバカさんの筆頭。ウチにいたりする?」
明子のその言葉に、沼田は瞬き三回分ほどの間、明子を見つめ、こくりと頷いた。
思わず、明子はがくりと頭を垂れた。
(木村メ)
(あのお調子者がっ!)
(もうっ)
(ばかばかばか!)
思わず、拳を振り上げ吠えだしそうになる衝動を、明子は堪えた。
主に木村経由で聞かされた噂話だったが、大塚が自分の株をあげるために流布させたものとは明子は思ってもいなかった。
なんてことをしているんだかと大塚の所業に呆れながらも、沼田が見せた感情に引きずられないよう、明子は自分を戒めた。
ここで下手に同調してしまうと、ことの本質を見誤ってしまいそうな、そんな気がした。
「魔の土建屋みたいなことを、あれこれ言っていたのって、ほとんどが僕より後輩の社員でしょう。彼ら、ここの会社の事なんて、ロクに知らないじゃないですか。川田主任や村田さんあたりの社員は、笑って取り合わなかったんじゃないですか、そんな話」
普段と変わらない明子の口調に、沼田もまた自分を取り戻したのか、また一つ深呼吸をしてからしゃべり始めた沼田は、いつもの沼田だった。
沼田の言葉に、木村があれこれと話していたときのことを思い返した明子は、確かに沼田より先輩格にあたる彼らは、木村の話など歯牙にもかけず笑っていたことを思い出した。
(木村くん)
(よくも、そんな余計なことを、あたしにまで吹き込んでくれたわね)
(全く、まんまと、大塚のバカに利用され……)
はたりと、明子の耳に、沼田のあの言葉が蘇った。
-大塚さんに利用されているのかもしれない
沼田は、確かにそう言った。
大塚とは犬猿の仲の牧野の部下である明子に、大塚にまんまと利用されて、まるで片棒を担いでいるのではないかとさえ疑っているような顔で、そう明子に言った。
まさかと思いつつ、明子は怖ず怖ずと沼田に確認する。
「もしかして、『魔の土建屋』伝説を広める手伝い、うっかりやっちゃったおバカさんの筆頭。ウチにいたりする?」
明子のその言葉に、沼田は瞬き三回分ほどの間、明子を見つめ、こくりと頷いた。
思わず、明子はがくりと頭を垂れた。
(木村メ)
(あのお調子者がっ!)
(もうっ)
(ばかばかばか!)
思わず、拳を振り上げ吠えだしそうになる衝動を、明子は堪えた。