リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「課長も……」
「うん?」
「君島課長も。そう、言ってくれたんです」
俯きながらも、どこか嬉しそうに、沼田は話し続けた。
「僕、辞表、出したことあって。この仕事って、思っていた以上に、大勢の人の前で話したりすることが多くて。プログラムを、ただ作ってればいいってわけじゃないんだなって。課長に、すっごい迷惑を、かけてしまったことがあって。もう、辞めようって。そしたら、入ってきたばかりのころより、喋れるようになってきたじゃないかって。ここまでやってきたんだから、もう少し、ここで踏ん張ってみろよって、そう言って引き留めてくれて。これくらいの失敗なんて、たいしたことはないって。大事なのはその後だって。逃げずに前に進めるかってことだって。俺が新人のときなんて、もっとすごい失敗を山ほどしでかしてきた、恥をかきまくったんだって、笑ってくれて。それがホントに嬉して、だから辞めずにいるんですけど。でも、肝心なときに、やっぱり、役に立てなくて。牧野さんや小杉さんまで、こんなふうに巻き込んじゃって」
淡々と言葉を続けて、しょんぼりと背中を丸める沼田に、明子はふわりと笑った。
「その分、沼田くんの耳は、大活躍してるじゃない。ちゃんとお客様の声を、聞き取ってるわよ」
明るい響きのその声に、沼田はまた顔を上げ、明子を見た。
そこにあった、笑顔を見た。
「喋るのが苦手でも、ちゃんと成果は出しているわ。ここに」
とんとんと、明子はノートを指で叩いた。
だから、君は大丈夫と、明子は笑ってみせた。
ダメだと言いながら、それでも逃げずに、ちゃんと結果を出している。
だから、大丈夫。
自信を待って。
明子は静かな声で、沼田にそう言い聞かせた。
「うん?」
「君島課長も。そう、言ってくれたんです」
俯きながらも、どこか嬉しそうに、沼田は話し続けた。
「僕、辞表、出したことあって。この仕事って、思っていた以上に、大勢の人の前で話したりすることが多くて。プログラムを、ただ作ってればいいってわけじゃないんだなって。課長に、すっごい迷惑を、かけてしまったことがあって。もう、辞めようって。そしたら、入ってきたばかりのころより、喋れるようになってきたじゃないかって。ここまでやってきたんだから、もう少し、ここで踏ん張ってみろよって、そう言って引き留めてくれて。これくらいの失敗なんて、たいしたことはないって。大事なのはその後だって。逃げずに前に進めるかってことだって。俺が新人のときなんて、もっとすごい失敗を山ほどしでかしてきた、恥をかきまくったんだって、笑ってくれて。それがホントに嬉して、だから辞めずにいるんですけど。でも、肝心なときに、やっぱり、役に立てなくて。牧野さんや小杉さんまで、こんなふうに巻き込んじゃって」
淡々と言葉を続けて、しょんぼりと背中を丸める沼田に、明子はふわりと笑った。
「その分、沼田くんの耳は、大活躍してるじゃない。ちゃんとお客様の声を、聞き取ってるわよ」
明るい響きのその声に、沼田はまた顔を上げ、明子を見た。
そこにあった、笑顔を見た。
「喋るのが苦手でも、ちゃんと成果は出しているわ。ここに」
とんとんと、明子はノートを指で叩いた。
だから、君は大丈夫と、明子は笑ってみせた。
ダメだと言いながら、それでも逃げずに、ちゃんと結果を出している。
だから、大丈夫。
自信を待って。
明子は静かな声で、沼田にそう言い聞かせた。