リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「沼田くんがダメ男なら、私だってダメ女よ。しかも超スペシャル級の」

明子は、努めて明るく笑いながら、沼田にそう告げた。
沼田くんが、自分のダメさを披露してくれたから、私もダメダメさを披露してあげようと、そう笑いながら言って、明子は自分の話を始めた。

「なにもかも、中途半端なダメ女なの」

ふふと笑う明子を、沼田は瞬くこともなく凝視した。

「結婚を約束した人に、結納直前で逃げられちゃって。四年と七ヶ月くらい前」

なんか、そこから一気にダメ女街道爆走しちゃってるのと、自分で自分を蔑むような口ぶりで、明子は沼田に話し続けた。

「大体、七ヶ月なんて半端な数字を言っちゃうあたりで、相当、イタいでしょ。そんなこと、ずっと引きずってね。聞いて驚いて。体重が二十キロも増えちゃったの。すごいでしょ。昔を知っている牧野さんに、どうにかしろだのなんだのと言われちゃうくらい、だらしないダメ女になっちゃったの」

茶化し交じりのその声が、微かに震えているのが、明子は自分でも判った。
それでも、喋り続けた。
< 157 / 1,120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop