リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
帰りは運転していくわよという明子に、沼田はせめて運転手くらいやらせてくださいと言い、頑として車の鍵を渡さなかった。
「今回は、営業と総務だけなのよね、要求が出るとしたな」
「そうですね。最初のときの顔合わせには、営業と総務の人しか出てこなかったんで」
「ということは、今日の打ち合わせで、概ね、要求は吸い上げられたかな」
「とりあえずは」
「なによ、とりあえずって」
会話もなく静かだった朝の車中が嘘のように、明子の矢継ぎ早な問いかけ対して、沼田も愛想良くすらすらと答えた。
「社長さんたち、同席してなかったじゃないですか? 各課の代表レベルでの打ち合わせが終わったら、出てきますよ。多分」
「そうなの?」
「そこで、また一波乱あって、あれこれ引っ掻き回して、また、いろいろ出てきますから」
「うわー。面倒くさい」
まだこんなの序のですよと、そう、さらりと宣言する沼田に、なんてこったと、天を仰ぐように明子は仰け反った。
(侮るべからず、ね)
(さすが……、あの牧野に、相手が悪いとまで言わせるだけの会社だわ)
(まだ、ここから盛り上がるのね、この騒ぎ)
(おー、ヤダヤダ)
やれやれと額に手を当てる明子を横目で見て、沼田は笑った。
「今回は、営業と総務だけなのよね、要求が出るとしたな」
「そうですね。最初のときの顔合わせには、営業と総務の人しか出てこなかったんで」
「ということは、今日の打ち合わせで、概ね、要求は吸い上げられたかな」
「とりあえずは」
「なによ、とりあえずって」
会話もなく静かだった朝の車中が嘘のように、明子の矢継ぎ早な問いかけ対して、沼田も愛想良くすらすらと答えた。
「社長さんたち、同席してなかったじゃないですか? 各課の代表レベルでの打ち合わせが終わったら、出てきますよ。多分」
「そうなの?」
「そこで、また一波乱あって、あれこれ引っ掻き回して、また、いろいろ出てきますから」
「うわー。面倒くさい」
まだこんなの序のですよと、そう、さらりと宣言する沼田に、なんてこったと、天を仰ぐように明子は仰け反った。
(侮るべからず、ね)
(さすが……、あの牧野に、相手が悪いとまで言わせるだけの会社だわ)
(まだ、ここから盛り上がるのね、この騒ぎ)
(おー、ヤダヤダ)
やれやれと額に手を当てる明子を横目で見て、沼田は笑った。