リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「で。土建屋の話だ」
脱線しそうになっていた話を、牧野は自ら軌道修正して戻した。
「俺があっさり引き受けたのが、予想外だったんだろうな。吉田のヤツ、無理しなくていいだのなんだのと、人に押し付けておきながら、やけに慌てるから、なんだかおかしいなと思ったんだけどな、一度やるって言ったもんを引き下がるのも癪だから、大丈夫だと言い切ってやった。俺にそこまで言われちゃ、吉田も引き下がるしかなかったみたいで、ほぼ何も書かれていない議事録を見せて、君島課長も、今回ばかりは手を焼いてるみたいだのなんだのと、捨て台詞、吐いて帰っちまってな」
「ヘ? 帰っちゃったんですか? 肝心なこと、なにもしないで?」
「おう。で、俺は俺で議事録を見て、こりゃ、妙だなと。進捗が遅れているって話は君島さんから聞いてはいたけど、それにしても、これは酷すぎるだろってな。なんか嫌な予感がして、沼田に電話したんだ」
「で、君島さんの件は、なにも連絡もされていなかったことを知ったと」
「おう」
「ついでに、大塚さんの悪事も知ったと」
「そうだよ。あの野郎。恩を徒で返しやがって。許せるかってんだ」
バカヤロウと、吐き捨てたその声に込められた牧野の怒りと悔しさに、明子はやっと肩の力を抜いた。
牧野に変わって、大塚相手に戦争するのはごめんだけれど、君島のためにならば、骨が砕ける覚悟で、この拳を大塚に振り落としてやると、明子は今日の打ち合わせでそう覚悟は決めた。
その気持ちは、今でも微塵も揺らがない。
ただ、牧野の真意を知りたかった。
同じ悔しさをその胸に宿しているのであれば、それでいい。
本心から、明子はそう思えた。
ふぅっと、息を吐き出して、胸の支えがやっととれたような気がした。
脱線しそうになっていた話を、牧野は自ら軌道修正して戻した。
「俺があっさり引き受けたのが、予想外だったんだろうな。吉田のヤツ、無理しなくていいだのなんだのと、人に押し付けておきながら、やけに慌てるから、なんだかおかしいなと思ったんだけどな、一度やるって言ったもんを引き下がるのも癪だから、大丈夫だと言い切ってやった。俺にそこまで言われちゃ、吉田も引き下がるしかなかったみたいで、ほぼ何も書かれていない議事録を見せて、君島課長も、今回ばかりは手を焼いてるみたいだのなんだのと、捨て台詞、吐いて帰っちまってな」
「ヘ? 帰っちゃったんですか? 肝心なこと、なにもしないで?」
「おう。で、俺は俺で議事録を見て、こりゃ、妙だなと。進捗が遅れているって話は君島さんから聞いてはいたけど、それにしても、これは酷すぎるだろってな。なんか嫌な予感がして、沼田に電話したんだ」
「で、君島さんの件は、なにも連絡もされていなかったことを知ったと」
「おう」
「ついでに、大塚さんの悪事も知ったと」
「そうだよ。あの野郎。恩を徒で返しやがって。許せるかってんだ」
バカヤロウと、吐き捨てたその声に込められた牧野の怒りと悔しさに、明子はやっと肩の力を抜いた。
牧野に変わって、大塚相手に戦争するのはごめんだけれど、君島のためにならば、骨が砕ける覚悟で、この拳を大塚に振り落としてやると、明子は今日の打ち合わせでそう覚悟は決めた。
その気持ちは、今でも微塵も揺らがない。
ただ、牧野の真意を知りたかった。
同じ悔しさをその胸に宿しているのであれば、それでいい。
本心から、明子はそう思えた。
ふぅっと、息を吐き出して、胸の支えがやっととれたような気がした。