リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
背後に人の気配を感じた明子は、肩越しに後ろへ目を向けると、牧野が明子のディスプレイを覗き込んでいた。
「そこまで出来てりゃ、今日は十分だろ。帰るぞ」
思いがけず間近にあったその顔に、明子は思わず固まった。
女性社員に絶大な人気があるというだけのことはあって、見た目はかなり整っている。それだけに、思わず、明子は息を止め、そのままその顔を見惚けてしまった。
そんな明子の視線など、全く意に介する様子もなく、牧野は明子からマウスを奪い取ると、明子が作り上げた報告書を、スクロールさせながら、ざっくりと眺めていった。
「ちくしょう。ダメ出しポイントが見当たらねえや」
明子と顔を並べるようにして、ディスプレイを眺めて、チっと舌を打ち鳴らすと、牧野は悔しそうにそう言い放った。
そんな牧野に「人の荒探しなんて、しないでくださいよ」と、明子は頬を膨らませる。
「明日、目を皿にして探してやる」
覚悟しとけと言いながら、明子に向けられた牧野の顔には、なにか楽しいことを企んでいる子どものような笑みがあった。
その表情に、明子の胸はドキリと高鳴った。
牧野のこんな顔を間近で見るのは、久しぶりのことだった。
昔に戻ったような、そんな錯覚を覚えてしまう。
高鳴る胸に、静まれと明子は命じる。
(近づきすぎ。気をつけなきゃ)
(昔のようには、もう、なっちゃダメ)
(ダメなんだから、ダメ)
明子は、自分にそう警告した。
「そこまで出来てりゃ、今日は十分だろ。帰るぞ」
思いがけず間近にあったその顔に、明子は思わず固まった。
女性社員に絶大な人気があるというだけのことはあって、見た目はかなり整っている。それだけに、思わず、明子は息を止め、そのままその顔を見惚けてしまった。
そんな明子の視線など、全く意に介する様子もなく、牧野は明子からマウスを奪い取ると、明子が作り上げた報告書を、スクロールさせながら、ざっくりと眺めていった。
「ちくしょう。ダメ出しポイントが見当たらねえや」
明子と顔を並べるようにして、ディスプレイを眺めて、チっと舌を打ち鳴らすと、牧野は悔しそうにそう言い放った。
そんな牧野に「人の荒探しなんて、しないでくださいよ」と、明子は頬を膨らませる。
「明日、目を皿にして探してやる」
覚悟しとけと言いながら、明子に向けられた牧野の顔には、なにか楽しいことを企んでいる子どものような笑みがあった。
その表情に、明子の胸はドキリと高鳴った。
牧野のこんな顔を間近で見るのは、久しぶりのことだった。
昔に戻ったような、そんな錯覚を覚えてしまう。
高鳴る胸に、静まれと明子は命じる。
(近づきすぎ。気をつけなきゃ)
(昔のようには、もう、なっちゃダメ)
(ダメなんだから、ダメ)
明子は、自分にそう警告した。