リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
ずっと、聞いてみたいことがあった。
でも、それを口に出すことが、明子にはできなかった。
それどころか、胸に仕舞いこんでいるそれを、ずっと牧野はもちろん、ほかの誰にも気付かれないように、隠して続けた。
(あなたにとって、あのころの私は、どんな存在だったんですか?)
聞いてみたい。
でも、答えが怖い。
だから、聞けない。
でも、知りたい。
そんなもどかしさを、明子はずっと抱いて、牧野の隣に座っていた。
牧野に力強く掴まれた場所に、明子はいつの間にか手を当てていた。
気のせいかもしれないけれど、喋る牧野の声にも、牧野らしくない微妙な緊張があるように、明子には感じられた。
「その、ピアス」
信号待ちのその間、牧野が明子の耳元にちらりと目を向けて、ぽつりとそう言った。
「ピアス?」
「今、つけてるやつ。前から、つけてたか?」
「ええ。二十歳のときに、祖父に買ってもらったやつですから。かなり年季はいってますよ。揃いのブレスレットもあったんですけど、なくしちゃって」
質問の意図が判らず戸惑っている明子に、牧野はふうんと鼻で頷き「見ていいか」と、尋ねてきた。
不思議なことを言い出したわねと思いつつ、手にとって見たいということかなと考えた明子は、耳朶に手を当てそれを外そうとした。
けれど、同じように明子の耳に伸ばされてきた牧野の手がそれを止め、そうして少しだけ顔を近づけた牧野は、明子の耳元に目を向けて、眺めた。
その冷たい指の感触に、明子の体がびくんと跳ね上がった。
でも、それを口に出すことが、明子にはできなかった。
それどころか、胸に仕舞いこんでいるそれを、ずっと牧野はもちろん、ほかの誰にも気付かれないように、隠して続けた。
(あなたにとって、あのころの私は、どんな存在だったんですか?)
聞いてみたい。
でも、答えが怖い。
だから、聞けない。
でも、知りたい。
そんなもどかしさを、明子はずっと抱いて、牧野の隣に座っていた。
牧野に力強く掴まれた場所に、明子はいつの間にか手を当てていた。
気のせいかもしれないけれど、喋る牧野の声にも、牧野らしくない微妙な緊張があるように、明子には感じられた。
「その、ピアス」
信号待ちのその間、牧野が明子の耳元にちらりと目を向けて、ぽつりとそう言った。
「ピアス?」
「今、つけてるやつ。前から、つけてたか?」
「ええ。二十歳のときに、祖父に買ってもらったやつですから。かなり年季はいってますよ。揃いのブレスレットもあったんですけど、なくしちゃって」
質問の意図が判らず戸惑っている明子に、牧野はふうんと鼻で頷き「見ていいか」と、尋ねてきた。
不思議なことを言い出したわねと思いつつ、手にとって見たいということかなと考えた明子は、耳朶に手を当てそれを外そうとした。
けれど、同じように明子の耳に伸ばされてきた牧野の手がそれを止め、そうして少しだけ顔を近づけた牧野は、明子の耳元に目を向けて、眺めた。
その冷たい指の感触に、明子の体がびくんと跳ね上がった。