リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
なんだかんだで、夕飯をなにも食べていなかったことを、今更ながら明子は思い出した。
全神経が仕事にのみ向かって集中していたためか、会社では空腹を感じることすらなかった。
真夜中に差し掛かった今になって、少しばかりの空腹を覚えてしまったが、かといってがっつり食べたいと言うほどでもなかったので、ここが我慢のしどころだわと、明子は黒糖とジンジャーパウダー、シナモンパウダーが入ったホットミルクを作った。
それで、空腹をしのぐのだと、自分に言い聞かせた。
入浴してほどよく温まった体を、ストレッチしながら伸ばしていく。
どこもかしこも、ミシミシギシギシと音を上げる。
固まっていたいろんなものが、解れていくような気がした。
体だけでなく。
心も。
ガチガチに、凝り固まっていた。
(特に、足は念入りに解しておこう)
(久々のパンプスに、とっても情けないことに、踵が赤くなりましたよ)
(足の裏は、ジンジンしてますよ)
(脹ら脛なんて、パンパンですよ)
(明日っから、少し踵のある靴にしようかな)
(ここ最近、ずっとペタンコ靴ばっかりだったもんね)
(今まで、だらけすぎたね)
そんなこんなを考えながら、何気にデジタル時計に目を向けた瞬間、明子の何もかもが凍りついた。
(ふ、ふみたかくん!!!)
デジタル時計は無情にも『0:32』を告げていた。
ふにゃりと、明子は床に突っ伏してしまう。
(月曜夜の、お楽しみがぁーっ)
(待ちに待った、月曜夜の、お楽しみがぁーっ)
もちろん、録画はしてあるので今からでも観ることはできる。
そこは問題はない。
問題なのは、待ちかねていた時間になっても、大好きな番組のことを思い出せないほど、他の事に気をとられていたことだ。
明子は、そんな自分に落ち込んだ。
(ま、牧野メッ)
(いや、今日の場合は、諸悪の根源は大塚さんか)
(いや、ここに至っては、もはや、どっちもだわね)
(くだばりやがれっ)
(天罰下れっ)
思い浮かべた二人の顔に、明子は「ばかーっ」と吠えて、拳を振り上げた。
全神経が仕事にのみ向かって集中していたためか、会社では空腹を感じることすらなかった。
真夜中に差し掛かった今になって、少しばかりの空腹を覚えてしまったが、かといってがっつり食べたいと言うほどでもなかったので、ここが我慢のしどころだわと、明子は黒糖とジンジャーパウダー、シナモンパウダーが入ったホットミルクを作った。
それで、空腹をしのぐのだと、自分に言い聞かせた。
入浴してほどよく温まった体を、ストレッチしながら伸ばしていく。
どこもかしこも、ミシミシギシギシと音を上げる。
固まっていたいろんなものが、解れていくような気がした。
体だけでなく。
心も。
ガチガチに、凝り固まっていた。
(特に、足は念入りに解しておこう)
(久々のパンプスに、とっても情けないことに、踵が赤くなりましたよ)
(足の裏は、ジンジンしてますよ)
(脹ら脛なんて、パンパンですよ)
(明日っから、少し踵のある靴にしようかな)
(ここ最近、ずっとペタンコ靴ばっかりだったもんね)
(今まで、だらけすぎたね)
そんなこんなを考えながら、何気にデジタル時計に目を向けた瞬間、明子の何もかもが凍りついた。
(ふ、ふみたかくん!!!)
デジタル時計は無情にも『0:32』を告げていた。
ふにゃりと、明子は床に突っ伏してしまう。
(月曜夜の、お楽しみがぁーっ)
(待ちに待った、月曜夜の、お楽しみがぁーっ)
もちろん、録画はしてあるので今からでも観ることはできる。
そこは問題はない。
問題なのは、待ちかねていた時間になっても、大好きな番組のことを思い出せないほど、他の事に気をとられていたことだ。
明子は、そんな自分に落ち込んだ。
(ま、牧野メッ)
(いや、今日の場合は、諸悪の根源は大塚さんか)
(いや、ここに至っては、もはや、どっちもだわね)
(くだばりやがれっ)
(天罰下れっ)
思い浮かべた二人の顔に、明子は「ばかーっ」と吠えて、拳を振り上げた。