リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
笹原の巨人というその単語に反応したように、またくすりくすりというイヤな笑いが聞こえてきたが、明子は聞こえない振りをした。
というか、今はそれどころではないというのが、明子の偽りない本音だ。
「部長っ 小杉のこの背丈は偽装ですっ ほら、見てくださいっ、足元っ こんな、こんな偽装靴を履いてるんですっ ほら、踵がこーんなにある偽装靴をっ 決して、巨人などという種族ではっ」
必死の形相で笹原にわたわたと叫ぶ明子を、牧野は鼻で笑う。
「靴を脱いでも、お前の方がデカいっつーの」
「毎日毎日、木村が『小杉さん、デカーっ』と、盛大に叫んでいる声は聞いていたが、確かに、隣に並ばれると叫びたくなるな」
いやーっと、耳を塞ぐ素振りをする明子の耳に、呑気な木村の声が否応なく届いた。
「ホントですよ。今日なんか、一段とデカいっす」
木村に悪気がないことは、明子にも判っている。
けれど、悪気がなければなにを言っても許されるなどと言う道理はない。
(木村くんっ)
(絶対、その口を、今日こそはぎっちりと、成敗してあげるからねっ)
(覚悟してなさいよっ)
明子の逆鱗に触れていることなど、全く気付いていない木村は、更に調子よく言葉を続けていく。
というか、今はそれどころではないというのが、明子の偽りない本音だ。
「部長っ 小杉のこの背丈は偽装ですっ ほら、見てくださいっ、足元っ こんな、こんな偽装靴を履いてるんですっ ほら、踵がこーんなにある偽装靴をっ 決して、巨人などという種族ではっ」
必死の形相で笹原にわたわたと叫ぶ明子を、牧野は鼻で笑う。
「靴を脱いでも、お前の方がデカいっつーの」
「毎日毎日、木村が『小杉さん、デカーっ』と、盛大に叫んでいる声は聞いていたが、確かに、隣に並ばれると叫びたくなるな」
いやーっと、耳を塞ぐ素振りをする明子の耳に、呑気な木村の声が否応なく届いた。
「ホントですよ。今日なんか、一段とデカいっす」
木村に悪気がないことは、明子にも判っている。
けれど、悪気がなければなにを言っても許されるなどと言う道理はない。
(木村くんっ)
(絶対、その口を、今日こそはぎっちりと、成敗してあげるからねっ)
(覚悟してなさいよっ)
明子の逆鱗に触れていることなど、全く気付いていない木村は、更に調子よく言葉を続けていく。