リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
そりゃねと、明子は謎の生命体を前に心中で呟いた。
(そりゃあ、確かに、たっぷりと、ミルクも砂糖も入れてやったわよ)
(糖分をくれって顔を、していたから)
(虫歯があったら、ウズウズしてきそうな白くて甘ーいっ、そういうコーヒーが飲みたいって顔してたから)
(それが、なにか?)
腹の中で、そんなこんなのぐだぐだな思いを、ぐつぐつと煮立たせながら、それでも、明子はなにも言わずに美咲を眺め続けた。
正確には、観察していた。
理解に苦しむこの生き物を。
ただ観察した。
牧野が、また、一つ、息を吐く気配に、明子はちらりとその顔を見上げた。
牧野からなにがなんでもマグカップを受け取るという、そんな決意がありありの必死な顔で手を伸ばしてきた美咲を、牧野はやんわりと、でも、ばっさりと、制した。
「結構です。これで十分です」
「でも」
そんなコーヒー、お口に合わないでしょうと言った美咲は、牧野にこれでもかというほどの華やかな笑みを浮かべて「淹れ直してきますわ」と、甘い声で言葉を続けた。
(そりゃあ、確かに、たっぷりと、ミルクも砂糖も入れてやったわよ)
(糖分をくれって顔を、していたから)
(虫歯があったら、ウズウズしてきそうな白くて甘ーいっ、そういうコーヒーが飲みたいって顔してたから)
(それが、なにか?)
腹の中で、そんなこんなのぐだぐだな思いを、ぐつぐつと煮立たせながら、それでも、明子はなにも言わずに美咲を眺め続けた。
正確には、観察していた。
理解に苦しむこの生き物を。
ただ観察した。
牧野が、また、一つ、息を吐く気配に、明子はちらりとその顔を見上げた。
牧野からなにがなんでもマグカップを受け取るという、そんな決意がありありの必死な顔で手を伸ばしてきた美咲を、牧野はやんわりと、でも、ばっさりと、制した。
「結構です。これで十分です」
「でも」
そんなコーヒー、お口に合わないでしょうと言った美咲は、牧野にこれでもかというほどの華やかな笑みを浮かべて「淹れ直してきますわ」と、甘い声で言葉を続けた。