リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「忙しくても、コーヒーを淹れる時間くらいあるし、そのついでに、人様の分も淹れてくる余裕くらいは、あるから」
井上さんがそんな心配してくれなくても大丈夫よと、明子は極力穏やかな声でそう告げるが、美咲はそんな明子に眉をピクリと跳ね上げた。
「なんて失礼な人なのかしら。牧野さんの分は、私がやるわ」
「三課の井上さんが、わざわざそんなこと、してくれなくていいわよ」
「だったら、小杉さんだって、わざわざそんなことしなくてもいいでしょ」
「ええ。わざわざ、人様の飲み物なんて用意しないわ。言ったでしょ。ついでだって」
「それが失礼なのよ。ついでだなんて。そんな人に牧野さんのお飲み物を用意していただきたくないわ」
「はい。わかりました。お好きにどうぞ。その件に関しては、牧野課長と話してください。私にとやかく言われても、困るから。悪いけど、仕事の話が途中なの。もう、いいでしょう。井上さんも、岡島課長から頼まれている仕事があるわよね」
そう言って、こんな不毛なやりとりは終いだというように切り上げた明子は、美咲に仕事に戻りなさいと席に戻るよう促した。
しかし、美咲は尚も食い下がろうと、明子のその言葉に噛みついた。
「あなたに、牧野さんと二人きりで、しなきゃならないような仕事の話なんて、ないでしょっ」
「はあ?」
牧野と並んで話をしていることが許せないとでも言いたげな表情で発せられた、美咲のそのとんでもない発言に、なによ、それと尋ね返す間もなく続けられた言葉に、明子は返す言葉すら思いつかぬほど、呆れ果てた。
「小杉さんったら、自分の仕事を放り出してまで、沼田さんのお仕事、お手伝いしているんでしょ」
「……は?」
「だったら、沼田さんと二人で、好きなだけ、仕事の話でもなんでも、していればいいでしょ」
ねっとりとしたイヤな言い方する子だなあと、美咲を見ながら明子は気が滅入ってきた。
(というか、沼田くんにまで、とんでもない火の粉を、わっさわさと、振りかけちゃってない?)
明子の目が、ちらりと沼田を捉えた。
井上さんがそんな心配してくれなくても大丈夫よと、明子は極力穏やかな声でそう告げるが、美咲はそんな明子に眉をピクリと跳ね上げた。
「なんて失礼な人なのかしら。牧野さんの分は、私がやるわ」
「三課の井上さんが、わざわざそんなこと、してくれなくていいわよ」
「だったら、小杉さんだって、わざわざそんなことしなくてもいいでしょ」
「ええ。わざわざ、人様の飲み物なんて用意しないわ。言ったでしょ。ついでだって」
「それが失礼なのよ。ついでだなんて。そんな人に牧野さんのお飲み物を用意していただきたくないわ」
「はい。わかりました。お好きにどうぞ。その件に関しては、牧野課長と話してください。私にとやかく言われても、困るから。悪いけど、仕事の話が途中なの。もう、いいでしょう。井上さんも、岡島課長から頼まれている仕事があるわよね」
そう言って、こんな不毛なやりとりは終いだというように切り上げた明子は、美咲に仕事に戻りなさいと席に戻るよう促した。
しかし、美咲は尚も食い下がろうと、明子のその言葉に噛みついた。
「あなたに、牧野さんと二人きりで、しなきゃならないような仕事の話なんて、ないでしょっ」
「はあ?」
牧野と並んで話をしていることが許せないとでも言いたげな表情で発せられた、美咲のそのとんでもない発言に、なによ、それと尋ね返す間もなく続けられた言葉に、明子は返す言葉すら思いつかぬほど、呆れ果てた。
「小杉さんったら、自分の仕事を放り出してまで、沼田さんのお仕事、お手伝いしているんでしょ」
「……は?」
「だったら、沼田さんと二人で、好きなだけ、仕事の話でもなんでも、していればいいでしょ」
ねっとりとしたイヤな言い方する子だなあと、美咲を見ながら明子は気が滅入ってきた。
(というか、沼田くんにまで、とんでもない火の粉を、わっさわさと、振りかけちゃってない?)
明子の目が、ちらりと沼田を捉えた。