リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
沼田は、美咲の取り巻きたちからの冷やかし混じりの視線の集中砲火に晒されていた。
けれど、そんな視線に負けるものかというように、やや固く強張った顔をしっかりと上げ、心配げにこちらを見ていた。
-あいつの顔つき、ちょいと、たくましくなったな。
その目に同じ物を捕らえたのか。
牧野が、明子の耳元に唇を寄せるようにして、そんなことを囁いた。
楽しそうなその声に、思わず、いつものような気軽さで、そうですねと頷こうとした。
しかし、牧野と明子のそんな様子を目の前で見ていた美咲の目が、きりきりとつり上がっていくのを見て、明子はその言葉を飲み込み、ため息を零す。
(牧野っ)
(あなたね、間違いなく、楽しんでるでしょっ この状況)
(別にいいんだけど、あなたがこのお嬢様の奇怪な行いを、楽しんでいるのは構わないけど、あたしまで巻き込まないでほしいなあ)
(こういうこと、ホントに、面倒くさい)
隣で涼しい顔をしている牧野を明子は横目で睨み、うんざりとした顔で美咲を見た。
明子のその視線になにかを感じたのか、美咲の目がいっそうキリリとつり上がった。
「あなたが、沼田さんの気を引きたくて、勝手にやってることなんでしょっ そんなことに、牧野さんを巻き込まないで。牧野さんが迷惑がってることも判らないなんて、なんてニブい人なのかしら」
「なにを勘違いしているのかは知らないけど、私が、一課の仕事を手伝っているのは、牧野課長からの指示があったからよ。そんなこと、当たり前でしょう。私が、自分の仕事を放り出してまで、よその課の仕事をしているなんて、そんなおかしな事ふれ回っていると、私ではなく、牧野課長が、困ることになるからやめさない。部下を管理することもできないのかと、部長から叱られることになるわよ。それでもいいの?」
明子の言葉は、美咲には思いがけない反撃だったのか。
目をぱちくりとさせて、驚いていた。
(まさか、今の言葉、本気で言っていたの?)
(ウソでしょ?)
驚いている美咲に、明子も驚くしかなかった。
けれど、そんな視線に負けるものかというように、やや固く強張った顔をしっかりと上げ、心配げにこちらを見ていた。
-あいつの顔つき、ちょいと、たくましくなったな。
その目に同じ物を捕らえたのか。
牧野が、明子の耳元に唇を寄せるようにして、そんなことを囁いた。
楽しそうなその声に、思わず、いつものような気軽さで、そうですねと頷こうとした。
しかし、牧野と明子のそんな様子を目の前で見ていた美咲の目が、きりきりとつり上がっていくのを見て、明子はその言葉を飲み込み、ため息を零す。
(牧野っ)
(あなたね、間違いなく、楽しんでるでしょっ この状況)
(別にいいんだけど、あなたがこのお嬢様の奇怪な行いを、楽しんでいるのは構わないけど、あたしまで巻き込まないでほしいなあ)
(こういうこと、ホントに、面倒くさい)
隣で涼しい顔をしている牧野を明子は横目で睨み、うんざりとした顔で美咲を見た。
明子のその視線になにかを感じたのか、美咲の目がいっそうキリリとつり上がった。
「あなたが、沼田さんの気を引きたくて、勝手にやってることなんでしょっ そんなことに、牧野さんを巻き込まないで。牧野さんが迷惑がってることも判らないなんて、なんてニブい人なのかしら」
「なにを勘違いしているのかは知らないけど、私が、一課の仕事を手伝っているのは、牧野課長からの指示があったからよ。そんなこと、当たり前でしょう。私が、自分の仕事を放り出してまで、よその課の仕事をしているなんて、そんなおかしな事ふれ回っていると、私ではなく、牧野課長が、困ることになるからやめさない。部下を管理することもできないのかと、部長から叱られることになるわよ。それでもいいの?」
明子の言葉は、美咲には思いがけない反撃だったのか。
目をぱちくりとさせて、驚いていた。
(まさか、今の言葉、本気で言っていたの?)
(ウソでしょ?)
驚いている美咲に、明子も驚くしかなかった。