リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「彼女たち、始業時刻が過ぎても更衣室にいて、お喋りしながら、ずっとお化粧とかしているんです」
「そんなのいくらしたって、大して変わらんだろうに」
「いやいやいや。あのくらいの年ごろの女の子たちを舐めちゃいけませんよ。そりゃもう、化けますからね」
「へいへい。あっこさんですら、今週はちょっくら別人だったしな」

顔つきが。
そう言う小林に、明子は目をぱちくりとさせて「そうですかねえ」と首を捻ってから、また美咲たちの話しを続けた。

「私、去年まではロッカールームも別だったし、朝も彼女たちより早いから、しばらくは気付かなかったんですけど。第一の沢口さんが言うには、入社してからずっとなんだそうです」
「まあ、朝からちゃんとあいつらが席に着いていたことはないな」
「それを注意した先輩に、社則に社会人らしい身だしなみをするように書いてあるのに、なにがいけないんですかって開き直ったそうで。最近、彼女たちに影響されて、そういう子が増えてきちゃったいるようなんです」

明子のそんなぼやきに、小林は鼻を鳴らして笑う。

「ほっとけ。そろそろドカンと雷が落ちる。賞与の査定前だ。知らんぞ、バカどもメ。なにが社則だ。小賢しいことほざくな」

けけけと笑う小林に、明子は眉間に縦皺を寄せ思案した。


(そろそろ、ドカンと、雷?)


明子が探るような目つきで小林を見ると、小林は唇に人差し指を当て、失敗したウィンクを明子に見せた。


(なるほど、ね)
(雷ですか)
(ふうーん)


明子は「そうですか」と、ただ、小さく何度も頷いた。
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